お前が開けたドア

 姉が「コロンちゃーんコロンちゃーん」とうるさい上に、そのコロンという名のメス犬を私に向けて「浪人生のお兄ちゃんでちゅよー」みたいなことをやるので腹が立って「もう僕は家出します」と言って家を出たまでは良かったのだが、暑さに負けて5分で家に戻り、姉に見つからないように部屋に閉じこもって数学のテキストをやるでもなくペラペラと捲っていたら、ドアをコンコンと叩く音がし、私が返事をするのを待たずにそのドアは開かれた。なんだよと思いながら開け放たれたドアの方を見つめていても誰も入ってくる気配が無いので、どうしたものかと思ってドアに近づくとコロンことカオリがぷるぷると震えてそこに座っていた。私は思わず「お前がドアをノックしたのか?」とカオリを尋問したのだが、プルプル震えるばかりで要領を得ないので、カオリを連れて姉の部屋に行き、そっと柵の中に戻しておいた。部屋に戻ってまたペラペラとテキストを捲っていたら、もしかしたらさっきのノックは飯田さんだったのかも知れないという気がふとしてきて、ニヤニヤと笑って、机に突っ伏して寝た。プリプリピンクの夢を見たが、あまり嬉しいものでは無かったのでここに詳しくは書かない。要約すると、生徒の私と女家庭教師の飯田さんが、熱心に数学の定理の証明をしている中に、圭ちゃんが乱入してきて「そんな地味なことはやめなさい」と叫び、それを合図に中澤・稲葉も部屋に乱入し、飯田さんを交えて4人でプリプリピンクの歌を歌った。それを私はぼんやりと見ていた。歌い終わると感想を求められ「良かったです」と言うと4人全員からビンタされた。少しだけ嬉しかった。あ、やっぱり嬉しい夢でした。