コミック・ワイドショー?

 無かった。どこに行っても無かった。このどこに行ってもというのは別に大袈裟に言っているわけじゃなくて、私は実際に5件の本屋を回ったのに、どこに行っても無かった。そりゃオメェ本屋がちいせぇんだよ、という指摘は大体において当たっているのかも知れないが、そういう問題でもなく、恐らく私の住んでいる付近で最も巨大であろうと思われる駅前の本屋に行ってみたところで、無かった。いや正確にはあの本屋はでかすぎてどこに何があるのか分からなかった。
 そもそもクイックジャパンの隣辺りにあるよ☆という漠然とした宣伝の仕方がいけないんだ。この野郎ポルシェ、そんな漠然としたことを言うな。クイックジャパンの隣にはバリヤバがありました。そして私はそんなバリヤバを手にとって、バリヤバイ!ジャッジャッジャーンと叫んでしまうようなナンバーガールフリークな訳でありますから、素直に諦めて諸行無常とはこういうことを言うのだナァと帰路へ着いたのでした。
 が、私はここで一つ重大なことを言い忘れていることに気付いた。コミック・ワイドショーは確かにあった。言っていることが二転三転するが、駅前の巨大書店ではなくて、もうちょっと寂しい街中のデパートメントの一角の書店に立ち寄ったところ、確かにコミック・ワイドショーはあった。しかし、そのコミック・ワイドショーはクイックジャパンとはおよそかけ離れたところに置かれていたし、第一そのコミック・ワイドショーはvol.0と銘打たれていて、ポルシェの押尾学論も無ければ、鳥肌のコラムも無い、ただの三流マンガ雑誌だった。サイズも微妙にでかくて、しかも変に薄かった。洋泉社の文字が表紙の右ナナメ下で悲しく自己主張していた。俺は何も言わずにそっとその場から離れると、中島らもの今夜すべてのバーでを買ってその書店を後にした。家に帰ってそれを読みながら泣いた。
 というわけで掟ポルシェさんは私の家にコミック・ワイドショーvol.1を無償で送ってくれるべきだと思います。