楽しいことを考えてみる

 世の中色々なことがございますね。直立歩行のレッサーパンダ風太君が今度はCMに出演するんだって?いやーそれは楽しみだなぁ。風太君かわいいよね。ちんぽしゃぶりあげたいぐらいかわいいよ。でも私があの写真を見る度に感じるのは「レッサーパンダの腹の毛は何故あそこまで不自然に黒いのだろうか」ということだけです。世の中はきゃーかわいい直立歩行直立歩行と騒いでおりますが、それに騒ぐのだったら私の包茎が治ったことに関しても騒がなきゃそれは嘘というものでしょう。まあ私の包茎が治ったということ自体が嘘なので、嘘に関して騒がなきゃ嘘と言ったところで、それは何の論理性も客観性も持たないのですが、そんなことどうだっていい。私が言いたいのは、まず仮定してみることが大事なのだ、ということです。
 まず仮定してみよう。私とののたんとれいなとミキティが同じ予備校に通い、同じ大学を目指す浪人生だと仮定してみよう。当然私は男子校出身者なので女の子との接し方というものを知らない。でもサバサバしたミキティとなら結構イケるかも知れないと思って、まずミキティに話かけてみる「あ、どうも」「どうも」「数学の問題できました?」「やってない」「あ、そうっすか」「そうだよ、何か文句あんの?」「いえ、そんなことはないですよ、ところでお名前は?」「人に物を尋ねるときは自分から名乗れ」「え?」「名を名乗れ」「は?」「名を名乗れと言っている」「ああ、そうですね、それはすいません。私はおまんこボーイと言います」「は?」「いえ、おまんこボーイです」「はぁ?」「僕の名前はおまんこボーイといいます」「……超面白い」「え?」「あんた超面白いよ!美貴あんたのこと好きだな」「ああ、そうですか、それはありがたいお言葉です」「ふふっ、超面白い、ねえ、付き合ってよ」「いやいや、滅相もございません」「ねえ、付き合ってよ」「いえいえ、私なんぞがおこがましい、私は一生を風俗に捧げるような人間です」「なんでもいいからさー」「いえいえ、恐れ多い」そんなやり取りをしながら、私とミキティは段々と親密になってきて、入れたり入れられたりの関係になって行くのだけど、その内に性的な関係は断たれるようになってきて、それは何故かっていうとミキティの「やっぱりあんたの包茎ちんぽじゃダメだわ」ってことなんだけど、私はその突き放すような別れの言葉に未だ嘗て無い猛烈な快感を感じて「いえ、ダメです。僕は美貴様がいなければ生きていけません」とそのおみ足に泣きすがる。「しらねーよ、キモいんだよ、死ねよバカ」その言葉に僕は果てた。
 「ああ、あの子かわいいな、名前なんて言うんだろう?え?何?辻?辻何?辻希美ちゃんかぁ。そういえば僕の小学校の同級生にのぞみって子が居てねぇ。平仮名でのぞみ。その子のお姉ちゃんはカタカナでナギサなんだ。かっこいいよね。何々、その辻希美ちゃんのお姉さんは文子さんっていうの?へー、文子さんねー。え?「ふみこ」じゃなくて「あやこ」って読むの?へー、そりゃすごいや、文子さんかー。かわいいの文子さんって?そうでもない?あっそう。いや、それにしても辻希美さんはかわいいなぁ。でも話かけられないなぁ。なんかこう別格って感じがするもんなぁ。いやそれにしても辻さんかわいいなぁ。なんか辻さんって言いにくいな。言いにくくない?別に?あっそう。君とは話が合わんな。でも僕はなんか言いにくいから辻ちゃんって呼ぶことにするよ。ああ、辻ちゃんかわいいなぁ。ねえ。辻ちゃんのおまんこに顔をうずめたいよ。え?普通そういう表現は『胸』に対して使うものじゃないのかだって?そうか、それは失敬。じゃあ言い直すよ。辻ちゃんのプリプリしたお尻に顔をうずめたいよ。何。なんだよ。文句あるのかよ。別にいいんだよおっぱいなんて。無くたって有ったって変わりゃしねーよ。良く考えてみろよ。美貴様にしろ、辻ちゃんにしろ、それからあれ誰だっけ、なんかかわいいんだけどいつも一人で居る子。あれ。何?田中さん?田中さんっていうの?凡庸だな、ちょっと困るよ。下の名前は?れいな?田中れいな?マジで?名前だけで勃起しない?しない。そうか。やっぱ君とは話が合わん。そうかれいなちゃんっていうのか。でさ、ともかく美貴様にしても辻ちゃんにしてもれいなちゃんにしてもおっぱいはまあ限りなくゼロに等しいわけじゃない。いや、俺は別にゼロに等しいとか思ってないよ。たまに無茶苦茶巨乳の時とかあるしね。多分おっぱいってそういうもんなんだよ。おっぱいって日によって伸び縮みするんだよ。何?そんなことないって何だよ。俺が童貞だからバカにしてんだろ。やっぱお前とは話が合わんな。絶交だよ。うるせーな、もうお前とは絶交したの!何?美貴様と付き合ってたんじゃないのかって?あれはあれだよ。フェイクというか、偽装というか、いや付き合うことは付き合ってたけど、実際には入れたり入れられたりというか、俺が一方的に美貴様にいじめ倒されてただけだし。『お前のチンポは包茎で、尚且つ小さいな、最低だ』とか言葉攻めされてたんだよ。うるさいな。そういうことにしとけよ。もうお前とは絶交なんだよ。それにしても辻ちゃんかわいいなぁ。名前もいい。希美だって。素晴らしい名前だ。希望に満ち溢れ、美しい女の子。ああたまんねぇなぁ!そういえば前その小学校の同級生ののぞみって子に『辻のぞみって漢字どう書くの?』って訊かれたから、『希望に満ち溢れ、美しい女の子って書くんだよ』って言ったら『キモイー』って笑ってたけど、あれ以後連絡が取れないんだよ、メール送ってもサーバーからそのまま俺が送った奴が返って来るんだよ。不思議だろ。超不思議じゃね?ミステリアス、トントンだよ。梨華ちゃんもかくやだよな。マンパワーなんつって。何だよ、もう帰るの?いやいやもうちょっとダベダベしようぜ。どうせ帰っても勉強なんかしねーだろ?する?何すんの?数学?嘘つけバカ。お前家帰ったらすぐ寝ちゃうとか言ってたじゃねーか。何。心を入れ替えましたってなんだよ。俺だけか。俺だけが家で勉強していないとでも言うのか。ええ。お前は俺を見捨てたのか。この薄情者!何。もう俺とお前は絶交しただろって何だよ。酷い言いぐさだな。俺がいつお前と絶交したんだよ。さっきって何だよ。そんなのしらねーよ、覚えてない。自覚が無かったとしか言いようがありません、なんちゃって。あれは秘書が勝手に、とかね。面白い?面白くない。そうか、やっぱ君とは話が合わんな。でも帰るの?帰っちゃうの?でもさー、あれだべ?仮に俺がさっきお前に絶交だ、と言ったとしてもよ。お前が俺を裏切ったのはその絶交の前なんじゃなくって?あなたの方が規約違反じゃないのかしら?って待てよ、帰るなよ、頼むから俺を一人にしないでくれよ。お前だけが友達なんだよ。ごめん。今まで好き勝手してごめんなさい。だから見捨てないで。僕を見捨てないで。一緒に大学行こうぜ。え?俺は東大を目指すことにした、って何だよ。一緒に専修大学目指すって約束したじゃんか。俺は心を入れ替えたんだって何だよ。空々しいんだよバカ。ごめん、怒った?そういうつもりで言ったわけじゃないんだって。え?帰るの?お前は東大に帰るの?そうか、もういいよ、好きにすればいいだろ、今度こそ本当にお前とは絶交だ!バカ野郎!」
 そんな風にしてミキティとの恋愛が終わった後、残っていた唯一の友人は僕のもとを去って行く。気丈に「お前とは絶交だ!」と罵声を張り上げたものの、その声を背中に受ける元友人の姿は僕よりも何倍も大きく見えた。僕は泣いた。泣いていると肩をとんとんと叩かれた。顔を上げるとれいなちゃんが心配そうな顔をして覗きこんでいた。「あの……、大丈夫ですか?」れいなちゃんが天使に見える。僕は「うん、ちょっとごめん、目にゴミが入ってね、HAHA」と快活に笑うフリをしながら、れいなちゃんとの恋の始まりを感じていた。だかられいなちゃんの唇を凝視して、次に発される運命の言葉を待った。れいなちゃんは申し訳なさそうに言った。「次の時間、私その席なんでどいてもらえますか?」