衰弱

 性の衰えを感じる。普段「セックスしたい」と口走ってはいるものの、その言葉を繰り返している内になんだかそれが一種の呼吸のような物になってしまっていて、「あれれ?僕は本当にセックスがしたいのかな?」という言動の不一致。正確にいうと心情と言葉との不一致というものなのですが、いざののたんが「セックスしよ?」とかどこかで聞いたような台詞で私との性交を促したとしても、私は「やった!ののたんとセックス!」という気持ちよりも「僕なんかでいいんですか?」みたいな感じになってしまって「どうせ僕は童貞だし、ののたんを満足させることなんか出来るはずが無いし、なんてったって童貞だし、キモイし、女の子に声掛けられないし、パンティラインと顔を見比べてウヒヒヒとやって、家に帰ってそれを思い出してオナニーとかそういうことをするしか能がないし、あー、うちの自慰ちゃんはものごっつモテたらしいのになー、自慰ちゃんってなんだよって感じですが、『じいちゃん』って打って変換すると『爺ちゃん』じゃなくて『自慰ちゃん』って出るこのPCの変換ソフトはなんなの?笑ってるの?バカにしてるの?私がいつもいつも止められないリビドーを『自慰』とか『オナニー』とかの短絡的な猥褻な言葉に打ちつけているの『フフンッこの童貞め』とかなんとか鼻で笑っているの?そりゃあ君は可笑しいかも知れないがこっちは真剣なんだ。そういえば君とは僕の性の目覚めの最初期の頃から大体いつも一緒だったね。弱そうな奴は大体友達、俺の兄弟大体お前みたいな、そんな関係だったよね、君とは。僕は今でも覚えているんだけど、始めて君が家に来た日、僕は君でこれでもかというほどマージャンをしていた。なんでマージャン?って感じなんだけど、それはマージャンが脱衣マージャンだったからだ。そして僕はマージャンに勝ったり負けたりしながら、ディスプレイの上でどんどんと脱衣したり反対に着衣したりしていく稚拙なアニメーションに勃起していたんだ。そしてそれを親の面前で延々とやり続けていたんだ。切ないという言葉はあまり使いたくはないのだけど、切ないってのはこのことだよね。そして、始めてネットが開通した日。そう、ダイヤルQ2の存在を知ってはいたけどまだ現実のものとは受け止めてはいなあったあの日。僕は家族の寝静まったリビングルームで一人、ダイヤルアップのピポパポという音を聴きながら勃起していたね。『これから僕はあの噂のエロサイトなるものを見るんだ!』そんな猛々しい思いに駆られて、もうこれでもかというほど勃起していたね。それは中学一年生の冬だった。僕はgooでたどたどしくセックスと打ちこむと、検索結果に表示されるたくさんの卑猥な言葉に圧倒された。女子高生セックス、中学生、無修正、おまんこまるみえ、パンチラ、榎本加奈子お宝、葉月リオナヌード、管野美穂ヌード、僕は狂人のようにそのサイトを次から次へとクリックした。だけどなかなかコンテンツに行きつかないんだ。これは何て嫌がらせだろう、ここまで見せておいて肝心のコンテンツに行きつかないなんて、なんていう嫌がらせなんだろう。そう思いながらも僕はギンギンに勃起していたね。こうなんていうか、見たいものが見れないという、ある種チラリズム的なダイナミズムにその時の僕は溺れていたんだ。ギンギンに勃起したチンポを寝巻きの隙間からひょっこり覗かせて、『まだかまだか』と思っている内に、なんだか股間が熱くなって来た。勘違いしないで欲しいのは、僕はそのエロサイトを巡っている間、一つも自分の陰茎に触れていなかったんだ。触れていないのに、昂ぶってくるものがあったんだ。次の瞬間『あっ』と思った時にはもう出ていたんだ。君は僕の始めてのハンズフリーオナニーを見届けたんだ。僕はエロサイトの広告を何百と見て周っているうちに、手を使わずに行ってしまったんだ。HAHAHA情けないよね。笑えよ。笑いたかったら笑えばいいだろ。だから僕にはののたんとセックスする資格なんてないんだ。遠くからののたんのムチムチした太腿やパンティーラインのキャプを見て、『ののたーん』と言いながらオナニーするしかないんだ。そうなんだ、だからもう、構わないでくれないか」と、きっとそういうことになる。そこに愛はあるのですか?