セブンスターと後藤真希

 今週の水曜深夜は松浦亜弥スティーブン・スピルバーグオールナイトニッポンだった。劣悪な放送だった。いつもの松浦亜弥のオールナイトニッポンはクラシックミュージックのように、ただ意味をもたない音として流れていくあややの声に身を任せていると、あややの自由意志を超えた、一種の運命のような神の意志、フロイト的に言うとスーパーエゴに導かれて、私とあややとの思考があややの無意識という同一地点に辿りつこう辿りつこうとさせてくれて、それはとてもグルーヴィンで、例え私とあややとの思考が一致しないとしても、その辿りつくまでの流れが一種の快感であって、我慢し続けていたおしっこをいっぺんに出す時の快感が連綿と続くような気持ちがするのだけど、今回の放送はスティーブン・スピルバーグのインタビューがバキバキと挟まり、それに対するあややのコメントだとか、「なんでちゃんと写真取れないのよ、なんでブレちゃうのよ」というような放送作家に対するあややの文句だとか、そのようなものがとんでもなくノイジーだった。今日の貴様はセックスマシンガンズだと思った。あややの言葉がリスナーという漠然とした物に対して向けられているから、あややの言葉は透明で、無意識に満ちていて、だからこそ私はその言葉の波に乗ってあややの無意識に進入していけるはずなのに、あややが明確な対象をもって、しかも私が顔やその正確や体型なども知る由も無いただの放送作家ごときに声を掛けるあややという構図が私は許せなくて、ワーワーキャーキャースティルバーグキャーみたいなことを言って騒いでいるあややの声が漏れてくるラジカセの電源を消した。2時。やってくる静けさと、蛙の声。私は半ば本能的に松浦亜弥の写真集を取り出すとそれに向かって暴言を吐いた。その後でええかーええかーええのんかー、とあややを愛でた。想像の中で、私の一挙一動に歓喜するあややをじっとりねっとりと犯した。気づくと4時だった。ティッシュ箱が空になった。僕は深くあややを愛していることを改めて自覚した。全部嘘だよ。今日から念のために文末に全部嘘だよという言葉をつけることを思いついた。実生活に支障を来たしてはまずいからだ。ここに書いてることは全て嘘だよ。僕はいつも嘘をつくんだ。僕はうそつきイソップなんだ。だから僕がここで嘘というとそれは本当に嘘というのだろうか、ということは論理だ。論理と証明だ。さあ僕は本当にここでは嘘をつくのか否か。それはあややだけが知っている。あややは僕の神なのです。ねえ、あやや。私は今松浦亜弥写真集まっちゅらを広げて、それを凝視している。おっぱいだ。
 木曜日のナイナイのオールナイトには宇宙人が来ますということだった。適当に聞き流していたから内容はよく分からなかった。藤岡弘が登場した。夏川純も登場した。藤岡弘がしきりに「かわいいね」と純ちゃんに対して言っていた。ナイナイは藤岡弘をいじりつづけた。夏川純なんてどうでも良かった。ナイナイは夏川純のおまんこよりも藤岡弘を選んだんだ。
 セブンスターと後藤真希ごっちんはセブンスターの火を付けると煙を深く吸いこんで、ごほんごほんとむせる。「むせるぐらいなら止めればいいのに」と言うと「そういうわけにもいかないんだよねー」と意味ありげな含み笑いをした。「なんで?」と問うと「私の好きな人の好きな仕草ってのがさ、女の人がクールにタバコを吸う仕草なんだって、だからこうやって練習してるの」そう言って髪をかきあげた。いつのまにか肩の下ぐらいにまで伸びた髪の毛がサラサラと指の間を流れて行く光景は、そういうフェチを持たなくても色っぽく思えた。確かにその光景にタバコは腹が立つほど似つかわしかった。私はちょっとした切なさを感じつつも「じゃあなんでセブンスターなの?」と問うた。ごっちんは「中村一義だからかな」と答えた。私は唐突にごっちんのタバコを持っている方の手を掴むと、驚いたように半開きになっているその唇に向かってキスをしてみた。ファーストキスはセブンスターの香りだった。そして血の味がした。頬をグーで殴られたからだった。「ごめん」と言うとごっちんは「私のファーストキスを返してよ」と泣いた。私はもう一度「ごめん」と言った。ごっちんは「責任とってよ」といった。私達はセックスをした。ごっちんは処女だった。痛がるごっちんの顔を見つめていると終わりはすぐに来た。これっきりこれっきりもうこれっきりーですかー、という感じがして、私は射精を我慢したのだけど、我慢しきれるものでもなかった。いよいよ我慢しきれなくなって「中に出すよ」と言った、ごっちんは眉間に皺を寄せて「ダメ」と言った。構わず出した。ごっちんは泣いた。ごっちんの涙はとても美しかった。私はごっちんの犬になって、その涙をずっと舐めてぬぐってあげたいと思った。