おもひでぽろぽろ

 久しぶりに高校へ行くと色んな先生にどうだったセンターどうだったと訊かれて、良かったです良かったです国立受けれそうですというやり取りに疲れたので、それならば逆にどうだったと訊かれる前にセンターできましたよ国立受けれそうですよ前期後期両方第1志望に出しますよと言えばよいのではないか、そうすればこの面倒なサイクルを断ち切ることができるのではないかと思い、先生との出会い頭にセンター良かったっすよと言ってみたところああそうそれでどうしたのみたいな顔をされたので卒業生の寂しさというものを感じました。私が行ったのは丁度6時間目の真っ最中だったため肝心の先生に会うことができず、図書室で過去問などをやって時間を潰しておりましたらば、中学生が神妙な顔をして読書をしておりまして、それで読んでいるのが正岡子規の俳句全集みたいな奴だったので、最近の中学生はすごいなあ、子規の俳句を嗜むのか最近の中学生は、考えられんなあと思いましてその中学生の顔をじっと見ていたのですが、よく考えてみると今は6時間目の真っ最中であり、中学生は教室で授業、この時間に制服を着て図書室で読書できるのは高3の生徒しかいないではないか、という衝撃の事実に気付き、再びその中学生の顔を見ますとこれがやっぱりどうみても中学生なので不思議だなあ不思議だと思いつつ過去問をやり続けておりましらば、チャイムが鳴り、ああチャイムの音色が懐かしいと思うと今度は唐突にクラシックがかかり「掃除の時間になりました、持ち場へ行って掃除をしましょう」という放送が流れはじめ、そういえば掃除の時間の時にはこの音楽が掛かっていたなあ懐かしいなあと思うのだったが、そのクラシックというのがバイオリンがやけくそ気味に高音フレーズを弾きまくるミュージックでありまして、これをBGMにほうきを振り回しながら掃除している我々、というのは実は滑稽だったのではないかなあと思いましたが、そう思っている内に先ほどの正岡子規を嗜んでいた中学生が席を立ち、今度は与謝野晶子の歌集を嗜み始めたので、僕はなんだかやけくそ気味に過去問をやっつけて図書室を出ました。図書室を出ると日が日が翳り始めており、空気がひんやりしておりまして、頭髪に問題を抱えている先生がほんの少し寒そうに見えました。