I don't know

 あの娘の本当を俺は知らない、あの娘の嘘も俺は知らない、けれどもなんとなく目の前に浮かび上がるあの娘を僕はなんだか知っているような気がします。例えば僕の布団に寝転がってテレビを見るような雑誌を読んでいるようなれいなが足をゆっくりとしかし確実にパタパタさせながら「アイス食べたい」と言う時に、俺はめんどくさがってキッチンの換気扇の前でタバコを吸いながら「買ってくれば?」と答え、れいなの足がピタッと止まってこっちを眺めている視線を感じるけどもそれに気付かないふりをしながらふーっと換気扇に向かって煙を吐いて、「買ってきてよ」と言うその何気ない声の響きにちょっとした幸せを感じるだろうな。それでなんとなくれいなを抱きしめたような気分になれる。