自分は只待っていると答えた。

 あぐらをかいてノートパソコンに向かっていると窓がガラリと開いて女が顔を出した。猫のような目をしていて、それがなんというか互い違いにというかイビツに歪んでいた。私が君はれいなだね、と言うと女は、私がれいなです、と返事した。女は窓を一度閉め、もう一度ガラリと開けると静かな声でもう死にますと言った。私は寒いから窓を閉めてくれと頼んだのだが、女は首を二編ほど横に振り、でも死ぬんですもの、仕方がないわ、それをまた静かな声で言った。私はゆっくりと立ち上がり窓を閉めた。れいなは窓越しに「百年待っていて下さい」と言ったので、私はじりじりと焦らす様にカーテンを閉めた。女は構わず「きっと逢いに来ますから」と続けざまに言った。私はまた机の前に座りノートパソコンを睨み付ける。ああなんだか少し肌寒い、戸締りを確認しようとカーテンを少しだけ開けると、まだ女は外にいて、ぼろぼろのアパートの二階のベランダに佇んで、もう死んでいた。私は窓を開けて、その女を丁寧に布団に寝かせると、「百年はもう来ていたんだな」と呟いて、この茶番に若干の疲れを感じたものの、布団の中でさむかーと言いながらぶるぶる震えるれいなの背中を右足で蹴った。