アナルファンク小説第一話 サブタイトル「ミキティはいらない」

 僕は夕暮れ、新宿駅西口だったか南口だったのまあ大体そこらへんから徒歩5分程度のスタジオペンタにてタバコを吸い吸い、アサヒスーパードライを飲んだ。ミキティは「スーパードライなんて贅沢だ」と言いながら氷結のグレープフルーツ味を飲んでいた。ののたんエヴィアンを飲んでいた。ミキティはそれにも「水なんて金出して飲んでんじゃねえ」と悪口を言った。僕とののたんミキティのそういうところに割と、まあそんなに露骨ではないにしても結構な頻度と強度でうんざりしていた。圭ちゃんがやや遅れてごめんごめんなどと言いながら現れ、ズブロッカの500mlのボトルをいつも小脇に抱えていた。圭ちゃんがトイレなどに行っている隙に、ミキティはいつもそれをこっそりと一寸だけ拝借するのだが、そういう感じがまた本当に嫌だった。
 圭ちゃんがマイクのあのごちゃごちゃした機材をあーでもないこーでもないといじっている間に、僕はギターのチューニングをし、マーシャルならどれでもいいやという感じでシールドを穴にぶっさすのだけども、その頃にはミキティは結構へべれけに酔っていて、ベースのチューニングも曖昧に、そのシールドのその尖ったその先を僕のケツ穴にねじ込もうとするので、それが本当にもうお前帰れよと言いたくなるぐらい嫌だった。ののたんは割と淡々とドラムのペダルをセッティングし、スネアをセッティングし、タムは全て外すなどという作業をして見ないフリをしているのだけども、絶対に気付いていた。それでいつも小声で何か呟いているのだけども、今日に限ってののたんのそばに屹立していたマイクのボリュームが上がっていたようで、その呟きがほわっとスタジオ内に響いた。「アナルファック」とそれは聞こえたのだけども、圭ちゃんはさも驚いたように「アナルファンク?」と訊くので、僕もちょっと驚いて「うん、アナルファンク」と応えた。ののたんはスネアをパタパタと叩いてからアッという顔をして、スナッピーを上げた。ミキティはまたこっそり圭ちゃんのズブロッカを飲んでいたので、俺は本当にもうこいつ帰ればいいのにと思った。圭ちゃんもそれに気付いたらしく「あんた飲むのはいいけど何か断ってから飲みなさいよ」「うん、ごめんね、ちょっと貰った」「ああそう、まあいいけど、もう帰れ、二度と来るな」「うん、ごめんね、分かった」そして僕は服を脱ぎ、ミキティの氷結に小便をした。ミキティはそれを飲んだ。ののたんはスティックをミキティのアナルに突き刺して、圭ちゃんがそれを蹴ったらミキティがすごい声で叫んだ。これがアナルファンクの産声であった。