AVについて

 もはやVHSよりもDVDの方が記録メディアとしてメジャーなものとなった今であっても、ポルノ映像がAV(Adult Video)と呼ばれ続けているのは不思議なことでもあるが幸運なことでもある。AVというのはAdult Videoの略称でもあれば、Audio Visualの略称でもあり、またそこに映し出されるAnalとVaginaの頭文字でもあり、最も単純に思いつくものであっても以上のような三つの意味を想起させるものであって、偶然にせよよくできているものだと思う。ただAVがAnalとVaginaの頭文字だとすると、そこに決定的に欠けているのはPenisであって、なんとなく片手落ちではないか、といった気分にもなる。少なくとも私にとって、AVにはPenisが必要不可欠なのであるが、そんなことを言い出せばOral(性的器官としての口あるいは快感を表象する声)も必要不可欠であるような気もし始め、そうするとそのAnalやVaginaやPenisやOralを用いてセックスのようなものがそこで行われるわけなのだけど、セックスのようなものにおいて必要不可欠なのは男女という互い違いの性であり、いや別に同性同士の絡みはセックスとして不十分とかいういかがわしい話ではなくて、同性同士がまぐわう際にも、どうしてもどちらかが入れられ、どちらかが入れるという、フィジカルな意味でのオスとメスが、だからそれは男女という生物学的性というよりオスとメスという役割としての性が必要だということなのだけど、繰り返しになるがそれは別に人間のセックスというものがどういうものであるべきかといういかがわしい話をしているわけではなく、AVという映像の物語枠組みにおいて、更に少なくとも私にとって、という限定付きで、AVのカタルシスはオスとメスの凹凸の接合が為され、そのこすりあわせ運動の後に絶頂に達するというプロットの達成にあるような気がしていた。だから何の話をしているのか全然分からなくなってきたのだけど、AVにおいて画面に映るものと同時に再生される音について考えると、AnalとVaginaでは到底足りていないという話であり、それでは今挙げたような要素を全て詰め込むとAVPOMFのような、略称としては非常に長ったらしいよく分からないものになるのであり、NWOBHMという長ったらしいヘヴィメタルムーブメントの略称を思い出したりもするのだけれど、まああまり美しいものではなく、また考えてみればオスとメスという凹凸の接合はあらゆる作品に関して必要なことだったりもするのだろうから、というのは「かみ合わせの良さ」とか「整合性」とかいう言葉で表されるその「しっくりする感じ」というのは、抽象化すれば何かしらのオス端子とメス端子が麗しく接合するということであり、あらゆる作品においてセックスは行われていると言うことだってできる気がし、だからそれはAVと他ジャンルの作品とを線引するものではなく、Oralに関してもそれはあらゆる作品に見られる要素であろうとはまた想像に難くなく、そしてジェンダー論の方々が言われるには、この世界はPenisで象徴される家父長制によって支配されているらしいから、これも取り立てていう必要はない。だから結局AVにおいて特権化されるのはAnalとVaginaであり(A感覚こそが全ての根源だ、とかいう話もあって、それを参照すればAnalも別にAVに特権的なものとは言えない気もするし、そういうことを言うのならばVaginaだって、あらゆる人間はVaginaから産まれてくるのだから、Vaginaもあらゆるものにとって根源的なものだ)、だからAVという呼称は、偶然にしても、よくできている、とそういうことを言おうと思ったのだけど、抽象的すぎてよく分からなくなった。