ダブルユーでーす

 ついさっき知ったんですが明日渋谷でダブルユーの握手会があるんだそうです。行くのか?と問われれば行けないと応えるしかないのだけど、もし私が今年大学に合格していて、東京でウハウハとキャンパスライフを送っていたとしたならば、行っていたのかも知れません。浪人してからよく言われるのは「浪人すると、浪人した一年分の学費と社会人の一年分の給料を無駄にすることになって、つまり合計すると丸々2年分、損することになる」という変な脅し文句なのですが、私はこのことに関しては別にそう深刻に捉えてはいない。それだったら早死にした人はものすごい損をしていると言いきってしまうことになる。三島由紀夫が損をしたか、といえば損をしていないし、マークボランやジムモリスンが損をしたかと言えば、これまた損はしていない。ただ、童貞のまま死んだ宮沢賢治はちょっと損してるかも知れない。僕もそんな「2年分の」金銭が損するぐらいのことは別に気にしちゃいないんだが、童貞のまま一生を終えるのだけは嫌だ。一度ぐらい亀頭の粘膜を女性の内部粘膜にこすりつけてから死にたい。しかし童貞のことはどうでもいい。本当に大事なのは浪人してしまったせいで「ダブルユーの握手会に行ける可能性」を失ってしまったことが悲しい。行くか行かないかは問題ではなくて、その可能性を失ってしまったことがただひたすらに悲しい。パンチラが見えるとか見えないじゃなくて、スカートを履いた女子高生が良いようなものです。分かるかな?分っかんねーだろうな。ののたんののたんを間近で見たい。ののたんの吐息を感じたい。ビクビクしながら「お、応援してます」と「ありがとうございまーす」のやりとりがしてみたい。あわよくば「つ、辻ちゃんっ」と声をかけて「なんですか?」と敬語で返されたい。「ののたん」って言って「えっ……?」と戸惑われてみるのもいい。「希美さん」って言って「はい」と事務的に返答されるのもそれはそれでいい。でもののたんは奇跡だから事務的な作業の中にも優しさがあって、いずれ訪れるであろう僕との清らかな交わりのために過呼吸になって、他のファンの方々と握手をしないでみたりする。そんな中私はチンチン掻いた手で握手をしようと思ったけど警備員に見つかってしまって止められて、結局ののたんと握手することはおろか、間近で見ることすら出来ずに愛の意味を教えてと呟きながらスクランブル交差点に身を投げてみたい。全てが終わると同時に全てがフリーダムになる。無。中島らもが言っていたのは「僕が死んで、みんなが僕のことを忘れて、全てが無になる。そういうのがいい」僕もそういうのがいい。でもののたんの心には「チンチンを掻いて私と握手しようとして警備員に止められて失意のあまり自殺をした、私の未来の夫」として私の姿を留めておいて欲しい。それは恥といえば恥なのだけど、私とののたんの間に「恥ずかしい」とか「知られてはいけない」みたいな境界線は無いし、私とののたんは一心同体のようなものであるから、抱き合ったらとろけてしまうし、セックスしたら「これぞ我が半身!」みたいな感じで超相性がいい。何かの神話だったか、男と女はもともと1つであって、それが地上に下りた時に男と女というように性が分かれてしまって、男は元々は自分の半身であった「くぼみ」を求め、女も自分の半身であった「でっぱり」を求める。だから、ののたんは俺の肉棒を求め、俺はののたんのくぼみを求める。ののたんくぼみって分かるか?おっぱいのことだ。俺はののたんのくぼみに肉棒を突き刺す。肉棒って何か分かるか?ちんこじゃないよ。僕の乳首のことだ。乳首と乳首のなすりあい。これが私とののたんのセックスであり、愛情確認であり、いわゆる猫におけるところの鼻先と鼻先をチョンッとクンニリングスであり、欧米で言うところのハグ、どうしよう、もし僕が欧米人でののたんももしかすると欧米人だったりすると、挨拶で「久しぶり!」みたいな感じで抱き合ってしまったら、それは公然とセックスをしているのと同じことなのであり、公然わいせつ罪で前科一犯、鳥肌実42歳厄年、無所属廃人、趣味は鳥の調教、妻の夏江が海辺でクリトリスを洗っておりました。そんなことになってしまう。どうしよう。僕は鳥肌実になってしまう。僕が鳥肌実だとしたらののたんは当然夏江。そうすると息子の名前は健太。犬の名前はなんだか忘れた。ポチでいいや。ポチと私とののたんと健太による乱交パーティー。線路は続くよどこまでも。「気持ちよござんしょう?」「嗚呼貴方、いと気持ちよろし」「ゆかんゆかん」「嗚呼、我もゆかん、嗚呼」敬語でセックス。古語でセックス。大変だ!僕は古語で喋りぬく自信がない。どうしようどうしようと考えていたらふと真実に気付く。私は欧米人でもなければののたんもまた欧米人ではないのであるから、こんなことを心配するのはまったくもってナンセンスなことなのです。あー!ののたん!明日俺が家で悶々と勉強している間に、ののたんは俺の知らない男と握手を交わしているのか!君はそれでいいのか!いいのか!俺は明日は予備校は休んで、渋谷にかけつけ、過呼吸に陥って「のんはやっぱ握手会やめる、あいぼん頑張って」と言っているののたんを優しく介抱しながら、そっと乳首と乳首をこすり合わせなければいけないのではないか!そして子どもを産まなければならないのではないか!子どもの名前は健太!すくすく育て!健太!お前は誰よりも強い子だ!健太!割礼しろよ!健太!俺はなんだかお前のことが好きになりそうだ!もうどうにでもしてくれ!ののたん!!