坂口安吾「白痴」

 読んだんです。あらすじは、主人公の男が白痴の女ってなんかええやんと思っていたら、キレイな顔した白痴の女が家に転がり込んできて、私痛いの、今も痛いの、とかなんとか言って、主人公はああまた虐待されんたんだね君はとか思って、とりあえず家に泊めるんだけど、別にセックスとかはしなくて、で、ここのシーンが素晴らしくて、白痴は主人公が自分に対して肉欲を表さないことを、即ち「私はあなたに嫌われてるから」という風に思って、いじけて部屋の隅っこに丸まったりして、それを何度も繰り返すものだから主人公は怒ってしまって、強引にセックスとかそういうことにもならずに、主人公は「肉体を求めることだけが愛情の表現ではないんだよ」とかなんとか言いながら、白痴の頭を子どもにそうするかのようにナデナデとして、いつのまにか眠ってしまうんだけど、お前は実際セックスしたかったんだろ?というのはまあすぐに露見するわけで、結局主人公は世間体が怖かったというだけで、最後まで白痴が自分の家に転がり込んできたのが近所の人にバレやしないかと冷や冷やしているわけなのだけど、で、この白痴の女には背景があって、近所に住む狂人の妻で、この狂人はいきなり他人の家の屋根に上って演説を垂れたり、豚に餌をやっていたかと思っていたらその豚を蹴ったりするわけなんだけども、この際狂人の話はどうでもよくて、この狂人の母は正常なんだけどヒステリーで、白痴はいつもこの狂人の母に怯えていて、主人公はその白痴をなんとなくかわいそうだなぁと思いつつ、多分に性的な感情も働かせていたに違いない。
 それで時代は戦時中、坂口安吾ですから、堕落論でありますから、主人公は白痴を連れて逃げるわけなのだけども、そこで白痴のあまりにも本能的な恐怖の感情の発露を「これは酷い、醜い」と感じて、白痴という本能の塊、即ち肉の塊を「なんかもう嫌だなァ」と思うわけなのですが、結局白痴と一緒に逃げ回って、安全地帯に辿りつくと、白痴は私眠いの、とか眠りたいの、とかぶつぶつ言い始めるわけで、主人公は眠るが良いさと応えて、白痴はその言葉を聞いてか聞かずか、スヤスヤと寝てしまうわけなのだけど、主人公はこう思う。「この非常時に眠れる白痴はなんて醜いんだ」それでも白痴をこのまま置いて行ってしまおうとかは思わなくて、「でもこれがいいんだよなぁ」みたいな感じで結局僕ちゃんはキレイな顔をした白痴の女が大好きなんでちゅ、という話なのだけれども、何で私が唐突にこのような話をしたかと申しますと、この白痴はまるで道重のようだなという感慨と、また、私がモーニング娘。を始めとしたハロプロを好きなのも、これと結局は変わるところがないのだなという感慨からなのでした。坂口安吾の短編は面白い。