僕の考える大学生活

 AM5時、ごっちんが何の連絡も無しに「眠いー」と言いながら家にやって来たので、僕は「今何時だと思ってんだよバカ」と半ば冗談のようにして言ったのだけど、ごっちんは「バカとかさ、酷いじゃんかさ」と言って泣きそうな顔をするので、俺はコイツ大分酔ってやがるなと思いつつも「ごめんごめん、ジョークだって、とりあえず上がれよ」とだけ言って、ごっちんを玄関のところにそのままにして、台所に行くと熱いお茶を入れた。お茶を入れ終わってもごっちんが中々来ないので何やってんだかと思って玄関に見に行くと、ごっちんは玄関でブーツを脱ぎながら寝ていた。「おいおいこんなところで寝るなよ」と言ってみるのだが、そう言うだけでは起きないのは分かっているので、ごっちんのブーツを脱がすと、半分おぶるような形で、ごっちんの肩を抱きかかえて立たせる。ごっちんはまた「眠いー」と言った。「眠いんならこんなとこじゃくてソファーで寝ろ」僕がそう言ってもまだ玄関先でコックリコックリと眠ってしまいそうになるので、肩を貸してソファーまで連れて行った。ごっちんは何度も「眠いー」と呟いた。呟くたびにアルコール臭い息が僕にかかった。僕はお酒が飲めないのでお酒の匂いは嫌いなのだけど、なんだか良い匂いだなと思った。ごっちんの横顔を盗み見ると、眠たそうな顔が妙に色っぽくて、ほんの少しだけ勃起した。ソファーにごっちんを寝かせると、ごっちんは深呼吸を一つして「お茶が飲みたい」と言うので、僕は先程用意していたお茶をごっちんに渡すと「熱いから気をつけて」と言った。ごっちんは分かってるという風な顔をすると、身体を起こしてお茶を2口啜った。僕は「わらびもち食べる?」と訊いた。ごっちんは首を横に振って「いらない」と言った。
 僕は冷蔵庫からわらびもちを出すと、一人でそれを食べた。ひんやりして美味かった。ごっちんはしばらくお茶を啜りながら僕がわらびもちを食べているのを見ていたのだけれども、「やっぱちょうだい」と言って、僕が食べようとして爪楊枝に刺していたわらびもちを横からパクッと食べた。「お前眠いんじゃないのかよ、早く寝ろよ」と言うと、ごっちんは「いーじゃんべつにー」と言って笑った。その笑顔が本当にかわいくて僕はまた少しだけ勃起したけど、それを悟られないようにして、さっきまでごっちんが口をつけていたお茶を飲んだ。しばらく無言で、ごっちんはわらびもちを食べ、僕はお茶を2杯飲んだ。「テレビつけようか?」と言うと、ごっちんは首を振って「この静寂がいいんだよ」とあまりに似合わないことを言うので僕は笑ってしまった。ごっちんが唇をとがらして「何がおかしいの?」と尋ねるので、僕は「なんでもないよ、ただちょっとおもしろかっただけ」と言った。ごっちんは「へー」と言って、またわらびもちを食べた。そしてわらびもちを2つだけ残して僕に突き返した。「何?」と訊くと「全部食べちゃ悪いかなと思って」と言うので「気にするなよ」と言ってみたのだが、ごっちんがニヤッと笑って「本当は食べたいんでしょ?」と言うので「はい食べたいです」と言って、素直にその2つだけ残ったわらびもちをパクパクと平らげた。ごっちんは「ちょっとトイレ借りるね」と言って、席を立った。僕はまたお茶を入れて、それをゆっくりと飲んだ。もう急須の中のお茶はぬるくなっていて、カーテンの隙間から朝日が差し込み始めていた。トイレの水が流れる音を聞いて、僕はコーヒーでも作ろうかなと思った。深い意味の無いモーニングコーヒーを二人で飲んでみるのも悪くないと思った。
 飼育黒板作者フリースレ「わらびもち」転載加筆訂正。