男と女

 朝かられいなの機嫌が悪いので困った。いくら機嫌を取っても「そんなお世辞いらないっちゃ」とつっけんどんにあしらわれる。もしかしてたらこのままずっと、永遠に、フォーエバー的に、れいなに嫌われてしまうかも知れないと僕は思い、今日は代ゼミを休んでれいなの相手をずっとしておこうと思った。だから僕は今日代ゼミを休みました。朝起きれなかったからとか、めんどくさかったから、とかそのような消極的な理由からではなく、れいなとの仲を回復したいという積極的な理由から僕は代ゼミを休んだので、決してこれは受験にマイナスではないと僕は考える。ところで、僕が「じゃあ今日は代ゼミを休んで俺と一緒に遊ぼうかれいな、どんな遊びがいい?」とれいなに尋ねると、れいなは未だ腹立たしげに髪の毛をくしゃくしゃっとなでつけ「別にあんたとなんか遊びたくないと」と不機嫌。僕はそれでも尚も諦めずに、今日のれいなはとってもかわいいね、心なしか斜視もそのブタ鼻も気にならない、何と言っても今日のそのスカートはとてもかわいい、最高だぜれいな、れいなのふとももにキスしたいなどと、れいなのことを誉めそやしたのだが、誉めれば誉めるほどれいなの機嫌は悪くなって行くようだったから僕は口をつぐみ、「朝ご飯作ってあげるよ、まだ食べてないんでしょ?」と腰を上げてれいなの目を見つめた。れいなは僕の視線から目を逸らし「別にいらん」と言って、木村カエラが表紙のダ・ヴィンチをペラペラと捲っている。僕はああこの表紙のカエラはなんだか椎名林檎に似ているなと思いながら「じゃあ適当に作るよ」と台所へ行き、たっぷりのバターで香ばしくホットケーキを焼いた。その匂いにつられてふらふらとやって来たれいなに「やっぱり欲しいんだろ?」と言って、僕は己の陰茎をズボンから取りだし、皮を被ったそれをフリフリと振ってれいなを挑発した。れいなは幻滅したような顔をして、「帰る」と言って部屋へ戻ろうとするので、僕は「ジョークジョーク」と言ってれいなの肩を掴んだ。れいなは僕の手を払いのけると「そんな手で触らないで欲しいと」と眉をしかめた。僕はその仕草にちょっとイラっと来て「れいなはさあ、今日は朝から機嫌が悪いみたいだけど、何なの?何か俺に不満でもあるの?あったら言えよ、言ってみろよ」と高圧的な態度に出てみたら、れいなは僕の顔をキッと見据えて「生理なんだよ!」と言って部屋へ戻ってしまった。れいなが立ち去った後の台所で僕は、その「生理なんだよ!」というれいなの台詞を何度も反復・反芻して、それからたった今作ったばかりのホットケーキを流しの排水溝へ無理矢理押し込むと部屋に戻り、れいなのことを考えて手淫に励んだ。れいなの生理れいなの生理れいなの生理れいなの経血れいなのタンポンれいなの陰毛れいなの乳首れいなの大陰唇及び小陰唇更にそれに附属するようにぽつねんと佇むクリトリス尿道ついには膣口即ヴァギナ!ウッ!と呟きながら果てた後、ふと時計を見ると11月22日の正午。れいなの誕生日はもう11日も前なのかと少し感慨に耽り、16歳ならそりゃもう陰毛も生えてるし月経だって毎月来るし、その度にタンポンやナプキンも変えてるし、それに伴う不愉快な感覚や感情を持て余してたりすることもあるよなと思い、れいなの部屋の扉をノックすると「さっきはごめんね」とだけ言って、当然のようにれいなから返事は返ってこなかったが、これでいいのだと僕は納得し、部屋に帰ってパソコンを立ち上げ、狼に「れいなに初潮は来ていた!」というスレを立てて、それスレが10レス行かない内に落ちたのを見届けてから、早稲田の赤本を少しだけ解いた。