エホバ

 玄関の呼び鈴が鳴るので宅急便でも届いたかなと思いドアを開けると二人組みのおばさん。瞬時にこれはあれだなエホバだと思ったのだけれども、もしかしたら「すいませんティッシュを貸していただけませんか」とかの深刻な用件だったらどうしよう俺はいくら東京に住んでいるとはいっても、そのような義理人情とか哀れみとか焼け石に水とでもいうような人間の暖かいものを捨てたわけではないのだ!という気持ちでいるからドアを開けたままその方々の言葉を待った。おばさん1は「すいませんお話はよろしいですか」と言い、僕の返答を待たずおばさん2が「エホバの証人のものなのですが」と畳み掛けた。僕は自分のお人好し加減に激しく苛立ち「僕は仏教徒なので結構です」と言った。おばさん1は「ああ、だからボウズなのですね」と非常に柔らかい笑みで言ったけれども勘違いも甚だしい、おばさん2は「神はどのような信仰の方にも平等に愛を分け与えてくださるのです」と人の話を聞かないので「僕は神を信じていません、信じているとすればお金です。エホバの教えを聞けばお金がもらえるのですか?愛理ちゃんに会えるのですか?ののたんとも会えるのですか?ののたんの娘を認知して俺が太陽の代わりになれるのですか?れいなちゃんのパンツはやっぱりまだ黒ですか?それとも紫ですか?」と捨て台詞を吐いてドアを閉めた。ドアを閉めるとすぐに隣の部屋からピンポーンと呼び鈴が鳴った。