バカまんこ

 それはそれは大層バカみたようなまんこでした。僕はそれをバカまんこと呼ぶように心がけようと思いました。一体全体どういうものがバカまんこ足りえるのかと申しますと、例えば男に手を握られただけでキュンッジュンッとなってしまうようなまんこで、欲望に限りがなく、その口の淵から卑猥というよりももはや邪悪な液体を垂れ流し、男の男根を、男の誇りを、男の恥じらいや自らの存在に対する居た堪れなさを、あまりにも傍若無人に咥えこんでしまう、恐ろしい絶望に満ちた穴であって、それはまんこなんてかわいらしい名称で呼ばれるようなものではなく、頭にバカとつけるに相応しいまんこ、もっと具体的に言うならば後藤真希のそれであって、ごっちんにまんこが付いている、というよりもバカまんこが付いている一応は女らしい身体つきをしていて、呆れてしまうぐらいにちょっと卑猥に、僕のちんこが硬くなってしまうその対象のことを後藤真希と呼ぶ、と言った方がいいのではないか、もしかしたらそっちの方が現実に則しているのではないか、そうなのではないか、きっとそうなのであろう、そうでありたいよ。僕はごっちんの事が好きで好き過ぎて、意味がわかんない、好き過ぎてバカみたい、なんつったりして、もしかしたらもうあんまり好きじゃねえんじゃねえかと疑ってしまいたくなるぐらい自然に好きであって、僕は彼女と淫乱な行いをしたい。それに比して、田中れいなのまんこというのは決してバカまんこなんて卑下されるものではなくて、うーん、どちらかといったら何でしょう、バカというよりもアホ、アホというよりも、うーん、真面目マンコというのはどうも字面がよろしくないし、音的にもつまらないから、僕はれいなのまんこのことを「れまんこ」と言おうと思う。やってしまいたいのは山々なのだけど、僕はどちらかというれまんこを持っているれいなを抱きかかえて、公園を散歩したり、サービスエリアでソフトクリームを食べながら、家族連れの小さな子どもなんかを見て「子どもってかわいいね」とか言ったりしながら、れいなのその言葉の真意を推し量ってぞくぞくしたりしたい。そしたらごっちんのまんこは「ごまんこ」だ。でもバカまんこという響きに、ちょっとだけグッと来てしまったので、基本的にはまんこは全部バカまんこでいいと思う。当然ちんこはアホちんこだ。対句法的に。サントリーモルツとサッポロ黒ラベル
 れいなとごっちんは僕の家に入るとまず第一声目に「くさい」と言った。言いながら靴を脱ぎ、ごっちんは健康サンダルで、れいなはブーツだった。ズカズカと奥まで入ると敷布団の上にごっちんは寝転がり、れいなはコタツのスイッチを軽々と入れて、さも当然のような顔をしてその中に滑り込んだ。ごっちんはスウェットだったけど、れいなはミニスカートだった。ごっちんとれいなは口々に「氷結もってこい」だとか「中でタバコ吸っていいですか?」とかうるさいので、僕は「中で出していいよ」と言いながら玄関先にうずくまってまずごっちんの健康サンダルの匂いを嗅ごうとしたのだけど一瞬「これ多分、ユウキとかもちょっと借りるねとか言って履いてたりするんだよな」と思い、やっぱり嗅ぐのやめよっと思ったのだけど、おれは別にユウキならセックスできるとか思ったりするのでちょっとだけ匂いを嗅いだ。ほこりっぽい、アスファルトっぽい匂いがしてなんだか違った。続いてれいなのブーツに手を伸ばし、アホちんこをガチガチにして、さあいよいよ匂いを嗅ぐぞ、れいなのブーツの匂いを嗅ぐんだ!至福!今ならすぐに死んでいい!匂いを嗅ぎながら死んでもいい!おかーさん俺死んでもいいよ!と思っいながらブーツに顔を突っ込んだところで頭を叩かれた。後ろを振り返るとごっちんバカまんこを曝け出して「トイレどこ?」と言った。「僕の口にしてください」「だからトイレどこよ?」「僕の口です、目の前にあります」「いや、そんなのいいから別に」と言って、ごっちんはお風呂場に言って排水溝にうんこをした。僕はてっきりおしっこだと思い込んでいたので、口にされなくて良かったという安堵とともに、急速に怒りがこみ上げた。「おい!何風呂場でうんこしてんだよ!この非常識!ありえないだろ!普通うんこはトイレでするだろ!風呂場でしていいのはおしっこだけって決まってるだろ!バカ!バカまんこ!後藤真希バカまんこ!つーかバカアナル!」と叫んだ。ごっちんはあはははーごめんごめんと笑った。あっそうだ、僕はこんなことをしている場合ではなくて、れいなのブーツの匂いを嗅がなけりゃ死んでも死に切れないのだった。急いで再びブーツに顔を突っ込むとごっちんのうんこの匂いでブーツの匂いがよく分からなかった。僕は絶望のあまりブーツを投げ捨てると、コタツに頭からもぐりこんだ。れいなが「ちょっと!えっち!」と言って股を閉じたけども、そういう問題ではなくて、でもパンツは限りなく透明に近い薄いブルーだったので安心しながらそこで死んだ。れまんこの傍らで死んだ。