joining a funk love

 ジェリーフィッシュ、くらげ、"Joining a fan club Big mistake"、ファンクラブに入ることは大間違い。YUKIちゃんが好きすぎて持ってる服は全部YUKIちゃんの影響でー、なんつって語る女の子の目の下はラメでキラキラと輝いていて、そこに注視しなければ、今にも泣き出しそうに目元がうるうるしているような気がする。YUKIのファンクラブは"commune"という名前らしい、そういえばセカンドかファーストのアルバムの名前がそうだった、コミューン。古めかしいというか、コミューンという響きは怖いね、ヒッピーを思い出すよ。ラブアンドピースの名の下に、無軌道で排他的で精神的暴力に満ち満ちている気がどうもしてしまって、おれらはおれらで楽しんでる、貴様らが嬉々として作り上げているクソみたいな資本主義社会にはうんざりだ、おれらのやることに口を出すんじゃねえ。コミューンの内側で生きている人々は普段牧歌的に、音楽を聴いたり、マリファナを吹かしたりしながら、気の向くままにセックスをして、美しい相互扶助、近代社会以降忘れさられてしまった人間的な暮らしをしているのかも知れないけれども、端々から暴力的で危ういニオイがするのはどうしてなのか、全然分からない。YUKIが好きすぎて〜の女の子も、やっぱりこのコミューンの中に生きていて、スーパーユキンコリニスタとして、YUKIのことを熱心に追っていたりするんだろうかしら、そりゃ知らない。ただ彼女がシューカツをしなけりゃいけなくなった時、大学3年の秋ですね、目元のうるうるしたメイクを落とし、金色に近いような脱色しまくった髪を黒に染め上げ、胸元まで伸ばしていた髪をばっさり、肩の上まで切りそろえて、リクルートスーツに身を包み、当初「どこ受けるの?」「シュッパンだよ」とそれでもまだ目を輝かせて言っていたのに、大学四年生の春、死んだような目をして「シューカツいやだ、もうどこも受かんない」と言っている様を見て、残酷だなあ、世界というのはあまりにも冷徹に深刻に残酷だなあ、やっぱりファンクラブに入るのは大間違いなんだなあと思った。
 スライアンドザファミリーストーン、ウッドストック、I want to take you higher、おれはお前をもっともっと高いところに連れて行ってやりたい、おれもお前にもっともっと高いところに連れて行ってもらいたい、fly me to the moon、私を月までつれてって!そしたらそこには何もなく、社会とかコミューンとか、ファンクラブだって全然ないでしょうよ。ただ月面にぼくはぼくの足で降り立って、あれ?ぼくを連れてきてくれたあのバンドはどこにいるんだっけ?地球かあ、なんで一緒に来てくれなかったんだろう、一人ぼっちはいやだなあ寂しいなあ、いやだなあさっきまで一緒に居た、スライを一緒に見ていてハイヤーハイヤー!もっと高く!もっと高く!と声を挙げていたあの女の子たちはどこに行っちゃったんだろうかなあ。fly me to the earth、私を地球まで連れて帰って!そしたらまた好きな子と同じテーブルで、テーブルの端と端で、その子が話すクソつまらん話に相槌を打って、横顔を見ながら愛想笑いとかしたりできるんだよ。そしたらその子の目元がうるうると輝いていたりして、目元を凝視しても別にそこにラメはあしらっていなくて、ただ単にその子の目元が本当に今にも泣き出しそうにうるうるしているだけで、希望にせよ絶望にせよ、その泣き出しそうな横顔を見てたら別にそれでいいかなと思うんで、ファンクラブ。