ダイアリー

 昨日はiPhone4Sをいじっていたら何故か夜が明けていたので愕然とした。いや、愕然とした、などとはやや言い過ぎであり単に「あ、朝だ」と思った程度のことなのだが、夜には家庭教師のバイトがあるので、このまま眠りにつくときっと夕方に起床、だるい、眠い、今日もまたお日様の光を直に見ることなく、のそのそと家庭教師先のおうちに出向き、陰気かつ淫靡な視線を女子高生に浴びせながら、英語の長文を音読させることになるのだ。しかしなんというか不健康だ、昔の人はお日様が上ると同時に起床し、沈むと同時に就寝したと言うではないか。おれの生活は不健康だ。人間としてこんなことでいいのか。というか今日から本学の学園祭ではないか。活気あふれるキャンパスでキャッキャしている女子大生の淫乱なふとももを見に行かないと後悔するのではないか。など考えていると気鬱になり、コタツから這い出して布団にくるまってiPhone4Sをいじっている内に寝た。起きるとやはり夕方、ではなく、まだ昼下がりといった具合の光加減であり、時計を見ると確かに14時半頃を指していた。少し救われたような気持ちになって、iPhone4Sをいじっているとまた寝た。次に起きるとやや日が傾き、時計を見ると16時前ぐらいだったので、まだイケるな、カテキョのバイトは19時からで、18時に家を出れば間に合う、まだまだイケる、おれは間違っていない、あわよくば風呂に入った挙句コーヒーを優雅に飲む時間すらある、おれは間違っていない、とても正しい、何も間違っていない、と思った。ぼくはとにかく気が滅入っていた。
 結局布団の中で「消えたい」「女子高生のパンツ見たい」など考えつつiPhone4Sをいじっている内に16時半になってしまい、あわててシャワーを浴び、包皮を丁寧に剥いたり戻したりしていると時計はそろそろ17時を指そうとするので家を出た。iPhone4Sをいじりながら、目的地へ徒歩にて向かった。家から徒歩で一時間弱かかるのである。iPhone4Sの液晶は3GSと比べて恐ろしく解像度が高く、鮮明であり、私はほとんど画面のその鮮明さのみに心を打たれて、tumblrでエロ画像を淡々とreblogした。reblogには終わりがないのだった。
 目的地と我が家の丁度中間地点ぐらいに私が在籍する大学があり、ついに来年で在籍7年目を迎えることとなるのだが、これはまだ親には話を通しておらず、来年の3月まで言うつもりもない。あれ、おっかしいなあ、卒業できるはずだったんだけど、単位の計算ミスっちゃったかなあ、という言い訳も来年で3回目である。おそらく通用しないだろう。なにか、新しい言い訳を考えなくてはならない。これが私の日々の苦悩の種であり、この心労について愚痴を垂れると社会人三年目の友人などからひどく蔑まれるので、ますます憂鬱である。reblogに終わりが無いのと同様に、留年も終わりがないのだ。少なくとも除籍されるまでは。とりあえず、その私が7年間在籍するところの大学に到着したところで時計はまだ17時前後を指しており、余裕があった。喫煙所にてタバコを吸っていると知り合い二人と遭遇したので、推理小説の話をした。「乱歩の『陰獣』を読んでるところなんですよ」「へえ」「おもしろいですよ」「そうですか」といった調子で、私だけが空回りしていた。ちょっと遠くの方で爆音で音楽が流れているのが聞こえた。「なんかレイブみたいなことになってるんですかね」「あれは学内で流れてるんですか?」「学内じゃないとしたらどこで?」「さあ、知りませんけど。うるさいですよね」「まったくですよね」先方の一人が「さあ修論だ」もう一人が「ぼくはもう今日はダメです」と言って、別れた。それが17時15分前後。タバコを三本吸って、ちょっと吸い過ぎてしまった、肺が重い、痰が絡む、消えたい、思いながら、てくてくと目的地に向かって歩いた。
 大学を出て大通りにて、ここでも祭が行われており、出店はもう閉まりつつあったが、人通りはまだ多かった。ショートパンツの女の子に狙いをつけて、その背後を歩いた。彼女が足を前後して歩く度にそのショーパンの生地はぐねぐねと複雑に形を変えるので、きっとその奥に潜むであろう陰唇もぐねぐねと複雑に形を変えながらパンティのクロッチの部分に擦り付けられ、黄色い筋を残すのであろうなあ、その芳香を嗅ぎたい、などというロマンティックなことを考えた。顔はかわいくなかったし、髪も汚かった。別に構わないと思った。
 家庭教師のバイトは滞り無く終わった。彼女は高校3年生であり受験生であるにも関わらず、未だセンター模試で6割を取れないという有様なので、私はいつもいらいらし、こうしないとダメああしないとダメなどと、くどくど説教を垂れて、私自身が最も嫌う所の、一々細かい所を目ざとく見つけ、それを非難して悦に入る、一見良識派なのだけど実の所他人を非難して優位に立ちたいだけ、自身のプライドを誇示したいだけのクソ野郎になっていたのであったが、ある時ふと「この子が落ちようが受かろうが、それがなんだっていうだろう。受かったらパンツくれるとか言うなら、おれも心を鬼にして、嫌われようがなんだろうが、細かい所を全て指摘し、徹底して鍛え上げ、この子を合格させよう。しかし現実はそうではない。ここで嫌われるのは得策ではない。っていうか年頃の娘に嫌われたくない。嫌われたくないんだよ! ここは一つ友好な関係を構築しつつ、油断を誘い、緩くなったお行儀の悪い、足癖の悪い、その二本の足の白い露なふとももを、この目にしかと焼き付け、そしてそれを一つ一つ大事にしていこう」そう思い、ふとももを見ながら数学1Aを教えた。